☆TORE DAYS☆ 〜異世界への扉〜

グレリオ歴845年・・・。
地上は、かつてないほどの活気に満ちていた。

愛しみ 愉しみ 憎しみ 悲しみ 

 それは、人という形を形成するのに必要なものであったが、いつしか、秩序は失われ、混沌とした空気に汚染されつつあった。人類は自ら創りあげた文明に自信を持ち、生命を賭して自分達の信仰を護った。だが、その信仰の先にあるのは、欲望と快楽のみであり、神の存在など遥か昔の御伽噺でしかなかったのである・・・。

 魔物が出現したのは、紛れも無く、人間達の責任であった。神は自分への信仰を取り戻す為に、人間達に試練を与えたのだ。それでも、人間は自分達の文明を信仰し続け、魔物との戦いにまでも挑戦をした。それが、ますます、神の怒りを買う事とは知らずに。

 数多の勇者達は中道に倒れた。金や権力で自分の身を護ろうとする者は白眼視された。全ては自己保身の為、全ては欲望と快楽の為、多くの人間が魔物によって殺され、人間によって見捨てられた。この時期に成っても、人間は神の存在に気が付かなかったのである。

 魔物という存在に疑問を持つ者は少なかった。元々、人間の想像力の世界には存在していたのだから、現実の形となっても違和感を持たなかったのである。神という存在に気が付いた者が僅かながらに存在したのは、魔物が出現するようになって数10年も経過したころで、それでも当時の人々に受け入れられる事は無かった。ましてや、神が魔物を創りあげ、人間達を滅ぼそうとしているなど、狂った思考としか思われなかったのだ。

 ある者は絶望に嘆き、ある者は失望に怒り、ある者は欲望に逃げた。それは終末を告げる鐘が地上に鳴り響いたのだと、身体で知ったからであり、現実として勢力を拡大し続ける魔物に対抗する力など、殆ど無かった。文明は衰退し、信仰は失われた。これこそが、神の望んだ結果だったとは誰も知らずに・・・。

 もはやこの世界は、終わる事を待つ囚人と同じになっていた。死者は棄てられ、生者は宛ても無く逃げまわり、自分だけを信じる猜疑心の塊となっても、生命にしがみつく、醜い存在と成り下がっても・・・。

 引き裂かれた日々を打開する門扉は、堅く閉ざされていた―――


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